結婚式ではご祝儀をたくさん受け取るほか、親から援助を受ける方も多くいます。そこで、ご祝儀や援助を受け取るときに、贈与税などの税金がかからないか心配な方も多いのではないでしょうか。
今回は、結婚式などで受け取るご祝儀に税金がかかるのかどうかをご紹介。また、税金が発生するケースについて詳しく解説します。結婚式にかかるお金について不安な方は、ぜひ参考にしてみてください。
通常、お金を無償でもらうと「贈与税」がかかります。1月1日から12月31日までの1年間における基礎控除額は110万円。110万円以上受け取った場合は「1年間でもらった金額-110万円」の額を申告し、納税が必要です。
しかし、結婚のご祝儀や祝い金を受け取る場合、基本的に税金はかかりません。ゲスト1人あたりにもらう額は関係性によって変わりますが、約3~10万円が平均。結婚式では、合計すると110万円以上はもらうことが多いものですが、なぜ贈与税がかからないのでしょうか。
それは、国税庁が定めた法令第21条「贈与税の課税価格関係」の、「3-9社交上必要と認められる香典等の非課税の取扱い」によって定められているためです。
「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。」引用:国税庁「第21条の2《贈与税の課税価格》関係」
「社会通念上相当」とは、世間一般的に見て多すぎないかということ。よって、普通に結婚式を挙げる方は、ご祝儀に対して税金がかかる心配はあまりしなくてよいといえます。
ご祝儀の税金は、具体的に「社会通念上相当」の金額に対しては非課税。しかし、具体的に○○万円からは課税と決められているわけではないため、一概にいくらまでならかからないとは言えません。
それは、結婚式の規模や人数、1人あたりからのご祝儀金額、地域の風習などによって大きく差が出るため。目安としては、ご祝儀として1人あたりの一般的なご祝儀相場(約3~10万円)を超えていなければ、税金はかかりません。
極例ですが、1人から数百万円など、相場から大きく外れた大金をご祝儀としてもらったような場合は、贈与税を申告して納税をしましょう。高額のご祝儀を受け取ったにもかかわらず、申告をせずにいると税務調査が入り、明らかに一般的な常識を超えた金額と判断されれば、贈与税の課税だけでなく、延滞税もかかるので必ず申告してください。
親や祖父母などが大金を、結婚式費用として銀行振込してくれる場合もあるでしょう。何も申請をしないと、ご祝儀とは別に、まとまったお金を銀行振込してもらうと、贈与税がかかる場合があります。
通常の贈与税と同様、基礎控除額である110万円以上の額が対象。申告をしないと、預金通帳が急に増えると税務調査が入り、やはり贈与税や延滞税が課税される場合があるので注意が必要です。
親や祖父母からのご祝儀を銀行受け取りする場合、平成27年4月1日に制定された、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」を利用することで、銀行振込をしてもらう場合も非課税にできます。
同制度は、18歳以上50歳未満の人が、両親もしくは祖父母(直系尊属)から結婚・出産・子育てにかかる資金を振り込んでもらった際に、1000万円までが非課税になる制度のこと。適用期間は令和7年3月31までです。
そのうち、結婚資金は300万円までとなります。受贈者が50歳になったとき、もしくは贈与者が死亡した場合に使い残しがあると、使い残した部分に税金がかかる場合がある点には留意しておきましょう。
申請は税務署ではなく、提携している金融機関で「結婚・子育て資金口座」を開設し、申告書を提出して行います。ほかにも、結婚資金として使った証明のために領収書等の提出も必要。振り込み前に手続きをしないと課税対象となってしまうので、忘れないようにしましょう。
参照:国税庁「No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
「結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」を活用する場合、非課税費目と非課税にならない費目があるので覚えておく必要があります。
結婚費用のしよう用途のうち対象となる項目は、まず1つ目が挙式費用や、婚礼・結婚披露にかかる費用。
・結婚式や披露宴の会場代
・衣装代
・引き出物代や写真代
など「結婚式にかかる費用」が該当します。
そして、2つ目は結婚に伴い、家賃・敷金などの新居や転居にかかる費用。
・賃料や敷金、礼金、仲介手数料
・転居費用(引っ越しで借りるレンタカーなどは対象外)
のうち、入籍日の1年前後の期間内に支払われるものが該当します。
一方で、結婚式に関係のない費用や、物件を賃借する以外にかかる生活費は、制度の対象外なので注意が必要です。具体的には以下の通り。
・結婚式や披露宴に出席するための交通費や宿泊費全般
・結婚式のためのブライダルエステ代
・婚活にかかった費用
・結納や顔合わせにかかった費用
・婚約指輪や結婚指輪の購入費
・新婚旅行費
親や祖父母などからのご祝儀は銀行振込ではなく、結婚資金を支払ってもらった場合は非課税。ただし、数千万円など、一般的な式にかかるとされる費用を大きく超えると税務調査が入り、指摘を受けることもあります。
目安として、結婚式にかかる平均費用は約360万円。一般的なご祝儀と同じく、常識の範囲内なら税金がかかる心配はほとんどありません。
結婚式で、ご祝儀以外のチップなどとしてお金を受け取り、ポケットマネーとした場合は贈与税に該当。よって、基礎控除額である110万円以上の額から税金がかかる場合があります。
多額のチップを受け取った場合は、会社員などであっても、確定申告をしたうえで税金を納めましょう。
個人事業主、または法人としてご祝儀を受け取ると税金がかかります。個人事業主の場合は「一時所得」、法人の場合は「雑所得」として収益を計上し、申告しなければなりません。
ただし、2次会や結婚パーティーなど会費制の式であれば、受け取った会費は式の運営費(交際費・福利厚生費など)の「預かり金」として、相殺できる場合もあります。迷った場合は、税理士に相談してみましょう。
ご祝儀に対しての税金は、一般的な相場を大きく上回らない限り、基本的にはかかりません。ただし、チップを受け取った場合、個人事業主・法人の場合、申請せずに銀行振込でもらった場合など、税金がかかるパターンもあります。両親や祖父母から高額の支援を受ける場合は、非課税になる制度を利用するための申請を忘れないようにしてください。
税金の問題をクリアしたら、ご祝儀をどう活用するか考えてみましょう。結婚式場の費用などに充てたい場合などは、ゲストが事前にご祝儀をクレジットカードで支払い、事前に受け取れるWeb招待状サービスもあります。ぜひ活用してみてください。