婚姻届の提出時に任意で押印する「印鑑」。ひとくちに印鑑といっても、実印・認印・シャチハタなどさまざまな種類があります。一体どのハンコなら婚姻届に使えるのか、迷う方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、そもそも婚姻届に印鑑は必要なのか、使える印鑑と使えない印鑑の種類は何なのかなど、よくある疑問にお答えします。これから婚姻届を提出する予定がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
従来、婚姻届は提出する際に署名に加え、押印が法律で義務付けられていたため、印鑑が必須でした。しかし、2021年9月から婚姻届への押印は基本的には不要で、任意となっています。
2021年9月にデジタル庁が発足され、婚姻届(戸籍法)を含む22法律の「押印見直し」がなされました。
主に新型コロナウイルスの影響で、業務上書面をやり取りするうえでの印鑑は、業務の妨げになるとされ、必要性が見直されためです。まだ施行されていませんが、将来婚姻届の提出がオンライン化することもささやかれています。
日本では「重要書類には押印する」という慣習が根強いため、婚姻届の押印欄は廃止されていません。必須ではないものの、押印しても本人が自筆で署名さえしていれば受理してもらえます。ただし、任意といっても、使える印鑑と使えない印鑑があるため、注意が必要です。
実印とは、役所に「印鑑登録」をして、公的に認められたハンコのことを指します。婚姻届を含めた公的書類で使用可能。また、不動産などの高額取引をする契約書でも実印を用いることがあります。
印鑑の形は一般的に丸ですが、楕円形・角型などでも可能です。大きさは、「8mmの正方形に収まらないサイズで、25mmの正方形からはみださないサイズ」と決められている場合が多くあるため覚えておきましょう。
実印を作る場合は、読みにくく、偽造されるリスクが少ない「吉相体」や「篆書体」といった書体で作るのがおすすめ。また、偽造されてしまうリスクを抑えるため、オーダーメイドで作ってもらいましょう。フルネームで実印を作る方もなかにはいます。
銀行印とはその名の通り、銀行や信用金庫などの金融機関に、印鑑の届出をしたハンコを指します。銀行印も婚姻届に用いることが可能です。
銀行印は、高額な取引をする際に本人確認の代わりとなる大事なモノ。特にサイズなどの規定はありませんが、実印と同じく、シャチハタやゴム印は銀行印として認められません。
また、実印と銀行印は同一のハンコでも可能ですが、それぞれ別の大事な役割を果たす大事なモノ。できれば別々のハンコを使うことをおすすめします。
認印とは、印鑑登録をしていない印鑑、つまり実印以外のハンコのことです。婚姻届で使える認印の種類は、朱肉を使って押すタイプのモノに限られるので注意しましょう。実印や銀行印を認印として使うことも可能です。
また、100均やホームセンターなどで安く手に入る「三文判」を婚姻届に押すことは、NGというわけではありません。
ただ、三文判は機械で作成されています。複製しやすく同じモノが手に入りやすいため、悪用されてしまうリスクも高まる点には注意が必要。よって、婚姻届に押す印鑑としてはできれば避けたいところです。
シャチハタとは、インクを内蔵しているスタンプタイプのハンコのこと。浸透印・ネーム印・ゴム印などとも呼ばれます。
宅配便の受け取りや回覧板など、簡易的な確認の際に使われるハンコで、法的書類には使用不可。そのため、任意といっても、法的な書類である婚姻届に押す印鑑としては使用できません。
ほかにも使用できない理由として、シャチハタの印面はゴムでできているため、経年で印影が変化してしまう、内臓のインクが消えやすい、誰でも手に入るなどが挙げられます。
婚姻届の印鑑を押す欄は
①届出人の署名押印欄×2(夫婦2人別々の印鑑)
②届出印欄×2(夫婦2人別々の印鑑)
③証人の署名押印欄×2(2名分)
の計6箇所。①と②には夫婦2人の旧姓の印鑑を押印します。夫婦で同じ印鑑は使えないので注意しましょう。
届出人の署名押印欄は代理人が提出する場合でも、夫婦2人の署名が必要です。
また、②の届出印欄とは、「捨印欄」のこと。こちらも必須ではありませんが、押しておくと、軽微な修正なら役所側で訂正してもらえるため、押しておくのがベターです。
ほかにも、証人2名の署名も必要なので、あらかじめ頼んでおきましょう。証人についても印鑑はなしでOKですが、もし押印してもらう場合、新郎新婦と同様シャチハタ印は不可。また、同じ姓の人に頼む場合、別々の印鑑であることが必要です。
新郎新婦の名前を書く欄(氏名や届出人欄)には、結婚後の姓ではなく、旧姓を記入しましょう。印鑑を押印する際も旧姓のモノを使用することを忘れないようにしてください。旧姓のフルネーム印鑑や、下の名前の印鑑でも可能です。
婚姻届では、証人の印鑑も任意であるものの、押印してもらう際は同じ印鑑ではなく、別々の印鑑で押してもらうようにしましょう。特に、片方の両親や、知り合い夫婦など、同じ姓の方2名に頼む際は注意が必要です。
また、押印はあくまで任意のため、1人が印鑑を押していて、片方は押印していないという場合でも受理してもらえます。「本人の自筆」であることが何よりも重要です。
婚姻届の印鑑が若干かすれていたり、にじんで文字が判読できなかったり、欠けたりしている場合も、実印など認められた印鑑であれば受理してもらえます。あくまで、役所は署名が自筆であるかを見ているためです。
そのため、二重や逆押しなど明らかに押印を失敗してしまった場合も問題ありません。ただし、修正テープなどを使ったりするのはNGなので注意しましょう。
印鑑が不要といっても、婚姻届は重要な法的書類には変わりありません。せっかく印鑑を押すならきれいに押すようにしましょう。
従来は婚姻届で書き間違いをしたときには、二重線を引いてその上から訂正印を押して空いたスペースに訂正後の内容を書き、婚姻届の枠外にある「捨印欄」に捨印を押していました。しかし、印鑑が不要になったため、訂正印や捨印も基本的には不要です。
しかし、新しい戸籍や氏の選択など、婚姻届の提出で新たに作られる重要事項については、役所によって訂正印を頼まれる場合も。念のために押しておくのがベターです。
印鑑を押さずに訂正する場合も修正テープや修正ペンなどのの使用はNG。訂正箇所に二重線を引き、空いたスペースに正しい内容を記入しましょう。
2021年9月の法改正により、婚姻届の印鑑の押印は不要になりました。ただし、任意といってもシャチハタ印は不可。実印・銀行印・認印のみと決められています。安くさまざまな場所で手に入れられる「三文判」でも構いませんが、可能な限りオーダーメイドの実印を用意しましょう。
入籍は夫婦2人にとって大事なイベントです。余裕を持って、丁寧に自筆で署名し、きれいに婚姻届を仕上げましょう。